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恩師紹介
佐藤金兵衛先生は、大正15年(1926年)1月5日福島県で生まれ、東北大学 医学部を卒業し、医学博士となり、東京北区滝野川で開業するかたわら全日本 中国拳法連盟会長を勤めるほか日本古武道振興会の理事、及び警察大学逮捕 術の講師でもあった。佐藤先生の家系は代々大和流柔術の家柄で、11歳の時 から古武道の世界に入り、これはと思う当時一流の先生方に付き、その奥義を 究め、古武道では、大和流・大東流・武田流・荒木新流・九鬼神流・義鑑流・高木 楊心流・柳生心眼流・浅山一伝流・一天冑介柳心流・天神真楊流・天心古流・ 卜伝流等々を習得なされ、かつ1956年からは太極拳・気功・八卦掌・形意拳等々 の中国武術を会得し日本人では初めての八卦掌の第四世伝人を継承された。 佐藤先生は高松先生の戦後の門人としては筆頭格の方で、高松先生から義鑑流 骨法術・高木楊心流柔術・九鬼神流棒術等の宗家伝の他、天津鞴韜武門宗門の 継承まで許されておられた。高松先生から佐藤先生に伝えられた全てを、佐藤 先生は私(種村)に伝授して下された。 私(種村)が佐藤先生に初めてお会いし、手解きを受けたのは、私が大学生の時であった。途中長い間が あったが、再度40歳を過ぎてから正式に門人となり、 個人教授という形で徹底した教えをして戴いた。 佐藤先生は、曲がったことが大嫌いで、策を弄する者を極力避けた。教えは厳しいが、その心には深い情愛 があった。物事の造詣が深く、武道界の裏の裏までも知っておられた。私は常に驚きと畏敬の念をもって、 一言も聞き漏らすまいと努力した。また、先生は実践武道家でもあった。先生の教えは、常に実践を踏まえ、 念頭においてのものであった。「流し足はいけません、素人ですよ」、「肩が上がるよ うな技を掛けるようでは だめですよ」、「大事なのは基本と中墨ですよ」などの言葉が今でも耳に鮮やかによみがえる。 平成2年(1990年)9月3日、先生は、戦地で危難に遭った親子を助けようとしたら、相手にライフル銃を突き付け られたが、その銃を咄嗟の速さで奪い取 り、難を逃れたという。その時の方法を実技をもって教えて下さった。 続いて、武田流合気之術の最高極意の口伝全伝をその場でお教え下さった。佐藤先生は、その技を、大庭 先生より「控え宗家」として直伝されたそうである。大庭先生亡き後、どなたもこの伝を受けていなかったので、 佐藤先生が正式にその代を継承されたとのことであった。中国の大会や旅行にも随分と連れて行っていただ いた。特に、平成3年(1991年)12月28日から翌年1月4日までの中国訪問では、北京在住の李子鳴先生宅を 訪れ、親しくお話をさせていただいた上、李子鳴先生から直接八卦掌第5世伝人を伝授していただく機会を与え て下された。時に李子鳴先生92歳の最晩年であった。 (敬称略) 私の敬愛する佐藤金兵衛先生は、平成11年(1999年)1月21日逝去された。 |
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